29.今宵はあなたと。

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「そうだ、これ貸してくれてありがとう。すごくうれしかったよ」 慌ててニット帽とダテ眼鏡をはずして、まこに手渡した。 「俺のを身につけてくれてるのが嬉しくて、彩ちゃんが気づくまでそのままにしておこって思って」 「ええ、言ってよー。……ってことは、楽屋を訪ねたときもつけっぱなし……」 「そうなるね。お、帽子あったかーい。彩ちゃんのぬくもりだ」 まこは楽屋で告白をしたことを後悔していたけど、私は変装したままで受けていたことをひどく後悔した。 でも、なぜか嬉しそうにグッズを身に着ける彼を見たら気持ちが穏やかになり、いろんなことが気にならなくなった。  
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