29.今宵はあなたと。

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「うん、ありがとう。その代わりに、俺が彩ちゃんのこと何よりも大事だってこと、覚えておいてね」 「もちろん、もう覚えているよ」 少しずつ近づいていく、二人の距離。 もう片方の手のひらが、私の頬を優しく包み込む。私はまこと同じように、その手に自分の手を重ねた。 唇に、優しい感触が降りてくる。 この二か月間、まこや敢太と何度も唇を重ねた。 その瞬間は確かに高揚感を得られたけれど、今ほど心が満ち足りることはなかった。 好きな人とキスとするのはこんなにも幸せなことだったんだ。 まるで二度と解けない魔法をかけられたみたいだ。  
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