プロローグ

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4月は新品で真新しい制服も、もうすぐ3ヶ月目ともなるとさすがに着なれた感が出てくる。 新しい学校生活にも慣れ、クラス内で仲良しグループみたいなのが出来上がっているだろう。 そして放課後はみな、部活や習い事や帰宅や寄り道にと、散り散りになって行く中。 高浜 夕矢(たかはま ゆうや)は、人がまばらになった廊下をわき目も振らずに全力疾走していた。 「くそっ、遅くなっちまった!」 夕矢は渡り廊下を駆け抜け”旧校舎棟“に飛び込むと、ギシギシときしむ階段を駆け上がり。 目的地の部屋の前につくと立て付けの悪くなった開きにくいドアを力任せにこじ開け、同時に(なか)ば叫ぶように言いながら中に入った。 「すまん、掃除当番で遅くなった」 夕矢が飛び込んだ部屋、よくある部室棟の一室程度の広さなのだが。 その内装は明らかに部室のそれではなかった。 長方形の部屋の真ん中に何故か、オンボロな部屋の内装に不釣り合いな豪華(ごうか)な革張りの回転椅子。 その前に置かれた、どうやって運びいれたんだと言いたくなるようなやたらデカイ机。 トドメに古今東西(ここんとうざい)のみょうちきりんなお面やら置物、さらには二宮金次郎像。 もはやカオスとしか言い様のない空間が広がっていた。 夕矢が部屋の中に入ると、椅子に座って窓の外を眺めていた”この部屋の(あるじ)“がクルリとこちらに向き直った。 「おや?高浜君。どうしたんだい、そんなに息を切らせて。 私はまったく、全然、これっぽっちも、完全に、100パーセント、絶対に待ってはいないが。それがどうしたんだい?」 まず間違いなく確実に怒ってる。 「だから、すまんって、謝ってんだろ。宇和裟(うわさ)部長」
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