あふれるなみだ。

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~男~ 彼女がいなくなって一週間が経つ。 自分が情けない、なんてことも思えないほどに悲しくて、俺はベッドに横になるたびに泣いた。 大好きな、俺の大切な人。 なにがあったのかわからない。 彼女の親が出した捜索願いも、成人している彼女が残したパソコンからの俺へのメッセージ… [ごめんなさい。あなたも、おとうさんもおかあさんも、私を探さないでね。そしてみんな悲しまないでね。私は幸せでした。いつも見守っています] それを見て警察も自殺の疑いが濃厚だとろくに探してくれない現実。 彼女がお気に入りだった純白のうさぎのクッション。 それはいまでも俺のうちにある。 ふざけて言ってた彼女。 「この子が浮気しないように見張ってるんだからね」なんて、笑いながら俺のまくらもとに置いたものだ。 俺は泣いた。 そのうさぎを抱きしめて。 ばかやろう、って言いながら泣いた。
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