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あぁ、いつものイケメンなご尊顔が、間が抜けたように固まってしまった。
ずっと隠していただろうに、暴露してごめんなさい。
「私、あの頃、智志さんのこと好きだったんだよ。
でも、ゲイの………恋愛対象が女性でもない智志さんが世間体を守るためだけで結婚を望んでいるのを知ってしまったから。
だから、結婚できないと思って………」
「───ちょ、ちょっと、待って!」
智志さんは口元を覆ったまま、何かを考えるかのようにまた動きを止めた。
「別にゲイであることを非難しているわけじゃないの。
こんな地味で冴えない私でも、結婚は想い想われてしたいと夢見てたから………」
私にゲイであることはバレていないと思っていたのだろうか?
よほど智志さんはショックを受けているようだった。
「………ない」
口元を押さえたまま、呆然と智志さんが何かを呟いた。
「え?何?」
聞き取れなくて聞き返す。
「………じゃない」
「ん?」
「俺は………ゲイ………じゃない」
「え?ゲイじゃない?」
「そう、俺はゲイじゃない。ノンケだ」
ようやく聞き取れてそう返せば、智志さんはコクコクと頷いた。
「そっか、智志さんはゲイじゃないんだね。でも、ノンケって何?」
以前玲央さんからも『ノンケ』という言葉を聞いた気が………。
「ノンケはゲイじゃないって意味!」
そっか、そっかぁ。
ゲイじゃないんだ。
ゲイ、じゃ………。
ん???
「えぇぇぇぇ!?!?」
また大声が出てしまった。
「え?え?智志さんって、ゲイじゃないの??」
「違う!断じて違う!!」
「でも悦子さんが………」
「あれは、母さんの持ちネタみたいなものであって………って、やっぱ母さんかよ」
頭を抱え込んでうつむいてしまった。
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