サヨナラ

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「あ、あのね、智志さん。  玲央さんは全然悪くないの!  私が勝手に………!」 そう。 気付けば玲央さんに惹かれていた。 智志さんと別れたばかりで傷ついていたのに………こんなに急速に玲央さんに惹かれ、愛してしまった。 「千咲は悪くない。  俺が、無理やり千咲を抱いたんだ。  智志に振られたと思い込んで弱ってたところに付け込んだ」 「・・・・・・・!!」 玲央さんがそう言った瞬間、智志さんが玲央さんに走り出した。 右手の拳を振り上げながら。 「智志さんっ!!」 ───ガッ!! 「・・・・・・っ」 鈍い音が私のところまで届いたと思ったら、玲央さんが体勢を崩し顔をしかめた。 そんな、殴るなんて………! 思わぬ修羅場に愕然となる。 あんなに穏やかな智志さんが………。 玲央さんは左頬を押さえると真っすぐに智志さんを見据えた。 「………気の済むまで殴れ。  でも、何度殴られても俺は、千咲を手放すつもりはない」 そう言い放った瞬間、再び智志さんが右手に力を入れたのに気付き、私は慌ててその腕に飛びついた。 「智志さん!やめてっ!  お願い、落ち着いてっ!!」 私が智志さんの腕を掴んだことで、智志さんの腕は振り上げられることはなかったけれど、勢いよく腕を振り払われ智志さんは私の両肩を掴んだ。 「なんで玲央をかばうんだよ………!  あいつは………あいつは………!」 『俺が好きになった子は………みんな玲央を好きになる』 以前智志さんと恋バナをしたとき悲し気に言われた台詞を思い出した。 大学時代、玲央さんが智志さんを好きだったとき、毎回智志さんの彼女を寝取っていた玲央さん。 それは玲央さんが智志さんを想うあまりに植え付けたトラウマで。 そのことでひどく智志さんは傷ついている。 ………私はさらに智志さんの傷口を抉っているんだ。 それを想うと胸が痛いくらい罪悪感に苛まれた。
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