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智志さんには本当に申し訳なく思う。
けれども、人を想う気持ちは同情だけじゃ変えられない………。
「………智志さん、ごめんなさい………」
謝罪の言葉を告げれば、私の両肩から智志さんは手をどけた。
そしてそんな私たちの様子を見ていた玲央さんが智志さんの前まで近づいてきたと思ったら、両膝を床についた。
「智志。
あの頃のことは本当に済まなかった。
ただ智志をほかの女に取られるのが嫌だっただけなんだ。
でも、千咲のことは違う。
千咲と出逢ったのだって智志が先だし、千咲に惚れたのも智志の方が先だ。
でも、順番なんて関係ない。
俺は本気で千咲のことが好きだし、大事にしたいと思っている。
だから、千咲のことは諦めてくれ」
と、正座のまま手を付き頭を下げた。
「れ、玲央さん!
土下座なんてやめて!」
慌てて玲央さんに駆け寄り体を起こそうとするが、玲央さんは頭を上げようとはしない。
「玲央さん………」
こんなに深く頭を下げるなんて、プライドの高い玲央さんからすればどれだけ屈辱的なことだろう。
そんなことすらできるくらい………玲央さんは私のことを思ってくれているんだ。
こんな修羅場な場面なのに、私は嬉しくて胸が熱くなった。
「千咲のことは本気?大事にしたい?
………玲央、お前よくそんな嘘を平然と言えるよな」
土下座をする玲央さんに智志さんが声のトーンを落とした低い声で言った。
「昨日、届いたよ」
………届いた?
「………結婚式の招待状」
………結婚式の………招待状………。
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