サヨナラ

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玲央さんは頭を上げることなく智志さんの話を聞いていた。 「10月結婚式挙げるんだろう?  今かなり人気の表参道の結婚式場だって、母さんが騒いでたよ。  新婦の名前は石嶺さやか、ってなってた」 新婦の名前は………石嶺さやか。 「もちろん新郎は、綾瀬玲央。  ………お前だったよ」 新郎は………玲央さん………。 そっか。 玲央さんたちは結婚に向けて着実に動き出してるんだ………。 「10月に結婚する、玲央が!!  どの面さげて『手放せない』だの『好き』だの言ってんだよ!  お前の本気なんて、そんな程度か!?  千咲を囲って愛人にして………それがお前にとっての『大事』にするってことなのかよっ!!」 ………愛人………。 覚悟はしていたけれど、直接そんなこと言われるとさすがの私も胸が痛んだ。 「まぁ、お前は愛人囲うなんてそれが普通なんだろうな。  お前がやってることは自分の父親がやってたことそのものだからな!」 智志さんの前で土下座をしている玲央さんの握りこぶしに力が入ったのが分かった。 そう言えば玲央さんには数カ月違いのお兄さんがいるということを思い出した。 玲央さんのお母様は亡くなっているけれど、今正妻の座についているのは元愛人………しかも結婚前から関係があったって、シズカさんが言っていたっけ。 確かに、おんなじだ。 玲央さんのお父様と同じことをしようとしているんだ。
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