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「千咲もだ!
そんな関係で本当に幸せになれるって思ってるのか?
人から後ろ指刺されるような、世間では許されない関係でも、それでも千咲は玲央を選ぶのか………?
俺にはそんなこと、真似できない。
誰も幸せになれないなんて、不幸だよ」
智志さんの言葉が私の心に突き刺さる。
今まで見ないように、考えないようにしてきたことを、一つずつ暴かれている。
「俺だったら千咲を幸せにできるよ………。
千咲を、千咲一人だけを、一生、愛せると誓える。
良く考えて、答えを出して。
千咲が俺を選んでくれれば、どんな千咲でも受け入れて、必ず幸せにするから」
泣きそうな顔で優しくそう言ってくれた智志さんは、相変わらず優しい。
その優しさも今の私には不相応なのだけれども。
「今日はもう、帰る。
ちゃんと二人で話し合って。
二人とも不幸になるのは………俺は見たくないから。
きっと千咲を育ててくれた藤浪のご両親だって、悲しむよ」
その言葉に私はハッとした。
頭の中には、能天気だけれど、私のことを一番大切に考えてくれている父正雄と母美津子の顔が浮かんだ。
「あと………殴って悪かった。ちょっと感情的になりすぎたよ。
………じゃあ」
土下座のままの玲央さんに、智志さんはそう声をかけて玄関から出て行った。
そして残された私と玲央さん。
重い沈黙が流れた………。
「れ、玲央さん。
とりあえず、ソファに座って」
沈黙に耐え切れず、私は玲央さんの肩をそっと抱いた。
そしてソファに座るように促した。
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