サヨナラ

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力なく立ち上がった玲央さんは、そのまま力なくソファに座り込んだ。 俯いたまま何も言わない玲央さんの正面に跪き、玲央さんの顔を覗き込んだ。 「うわ………殴られたところちょっと腫れてるね。  とりあえず保冷材で冷やそうね」 よほど勢いよく殴られたのか、玲央さんの左頬は赤く腫れていた。 こういう時の処置は玲央さんの方が詳しいんだろうけど………とりあえず冷やしてみようと思い、立ち上がった時─── 「・・・・・・」 無言のままの玲央さんに手首を掴まれた。 「玲央さん?」 振り返ってみれば、玲央さんはまだ俯いたまま。 「どうしたの?」 なるべく優しく声をかけ、また玲央さんの前にしゃがみこんだ。 「ほら、早く冷やさないと………」 そのまま腕を引かれ、玲央さんの胸に飛び込むように体勢を崩した。 「ちょ、玲央さ………」 「───悪い」 やっと聞こえてきた玲央さんの声はとても静かで。 「俺は………お前が好きだ」 私の心を熱くする。 「誰よりも………お前のことを愛している」 ギュッと抱きしめられ、私は込み上げてくるものを押さえながらコクリと頷いた。 「私も玲央さんを愛してるよ?」 そう言って私も玲央さんの背中に手を回し、力いっぱい抱きしめ返した。 「千咲。  俺は、結婚する」 「うん」 「ここ一週間、親父を説得してみたけど、ダメだった」 「………うん」 堪えていた涙が、ほろりと目尻から零れ落ちた。
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