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「千咲、終わった?」
肩をポンと叩かれ振り返れば、親友の永井桜………いや、結婚したからもう青柳桜(あおやぎさくら)がニッコリと微笑んでいた。
「うん、ちょうどおわったとこ」
タイミング良く現れた桜に私も立ち上がった。
「お先に失礼します」
経理部のみんなに挨拶をし、桜と連れだって会社を出た。
「新婚旅行帰って早々、付き合わせちゃってごめんね。
せっかくの金曜の夜なのに………」
「いいの。修も仕事忙しいみたいだから今夜も残業だって言ってたし。
それより私こそ千咲の辛い時に側にいてあげられなくてゴメン………」
新婚旅行から戻ってきた桜。
『お土産買ってきたよ~』って言う桜に私は智志さんとお別れしたことを話すと、『その話し、ゆっくり聞くから!』と、桜は優しく言ってくれた。
桜の心遣いに感謝する。
私はいい友達を持ったなぁ。
今夜の行き先は会社から近い“ファルファッラ”。
昼はOLにランチが人気だが、夜はお酒も飲める素敵カフェでもある。
店に入ると可愛らしい店員さんが窓際の席に案内してくれた。
「あー、私、パスタ食べたい!」
ジャケットを脱ぐと桜はメニューを覗きこむ。
とりあえず数品頼み、二人でシェアして食べることにした。
頼んだワインで乾杯してから一口飲むと、桜はグラスの淵を拭いながら聞いてきた。
「………千咲は、智志さんのこと本当にもういいの?」
智志さん………。
思い出すとまだ心がチクリと痛む。
でも、もうどうしようもないことだ。
「………仕方ないもん。
もう、悦子さんにもきちんとお断り言っちゃったし」
「だけど………智志さん、千咲のこととっても大事にしてるように見えたよ?
ゲイを隠すために結婚するような人じゃないと思う」
「………うん」
私もそう思ってた。
だけど、智志さんの本意はもう分からない。
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