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智志さんとお別れした。
お別れした瞬間、自覚した。
自分の気持ちに。
自分がどれだけ智志さんに惹かれていたかってことに。
私の遅ればせながらやってきた恋は、気持ちを告げることなく、砕けてしまった。
「………朝、かぁ」
カーテンから差し込む光がやたらと眩しくて目を細める。
泣きはらした目がショボショボする。
念の為、寝る前に冷やしておいたけれど、やっぱり少し腫れぼったい。
プニプニと瞼を押している鏡の向こうの私は、とても情けない顔をしていた。
「………はぁ。それでも会社にはいかないと」
気合を入れるため、冷たい水で顔を洗う。
化粧で少しはこの冴えない顔も誤魔化されるといいのだけれど。
すぐに私の変化に気付いてくれる親友の桜は、結婚式の後から新婚旅行に行ってしまって、しばらく会社には出てこない。
あとは同じ部署の絢奈ちゃんだけだけど。
「泣きはらしたって、バレるかなぁ………」
溜息混じりでそう呟けば、不意にポケットに入れていた携帯がメールの受信を告げた。
「………!」
着信音に一瞬ビクリと身体が硬直した。
………もしかして………智志さん?
未だに抱いてしまう期待。
ドキドキする胸を押さえながら携帯に手を伸ばす。
「………って、玲央さんかぁ」
そしてそんな期待を描いてしまった自分に幻滅する。
自分はきっぱり振られたんだ。
そう言い聞かせ、玲央さんからのメールを開いた。
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