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「………プッ」
そのメールを見て思わず噴き出す。
無題のそのメールに添付されていたのは、ぐっすり眠る猫の写真だった。
しかも玲央さんご自慢の愛車ランボルギーニのボンネットの上で。
写真じゃ分からないけれど、きっとその白い車体には猫の足跡が付いていることだろう。
【マジムカツク】
メールの内容はそれだけだった。
でも、愛車の前で固まる玲央さんを想像すると自然に笑みが零れた。
「猫を追い払う玲央さんとか、ウケる………」
呟いた声をそのまま返信し、スマホをバッグに押し込むと玄関に向かった。
パンプスに足を通して気付いた。
笑ったせいか、少し気持ちが軽くなっていたことに。
それが、失恋で傷心中の私に対する、なかなか分かりやすくは見せてくれない玲央さんの優しさであることには気付かずに、私は会社へと向かった。
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