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「そういえば、お酒どうなったんだろうね」
「あの日本酒か、健作おじさんが生きていれば真っ先に疑われたけど、今頃三途の川だからな」
「不思議ね」
翌日、おじの葬儀告別式が行われた。つつがなく行われ。葬儀場に行くことになった。霊柩車に乗って市の斎場へ向かう。死んだのはもう前だが、肉体がなくなるというのは特別な思いがあるらしい。みんな急に無口になり、まるで自分が燃やされると思っているみたいに無言を通した。
火葬場ではもう一組いた。宗派によって作法が若干違う。あちらさんは僧侶が念仏を唱えた後、火葬をするらしい。
わが宗派はシンプルで坊さんは来ない。最後のお別れで顔見の窓から本人の死に顔を見てお別れだ。
おじさんの顔を正面から見るのは初めてかもしれない。穏やかな死に顔だったさようなら。
とうとう火葬用の窯に入れる職員の人が手慣れた手つきで棺を入れ、ふたをした。
火が入る。ゴーという火葬場特有の火力の強い火の音がする。
うちの宗派では燃やしている間水道水をコップにそそぎ7、8人で窯の前の遺影にコップを置いては、新しいコップを交換しグルグル回って故人ののどがかわかないように続けるものがある。
昔は火葬が終わるまでだったらしいが今は途中で適当に切り上げる。
私はなんとなくおじさんがかわいそうに思い一人で水道と遺影を往復した。
何回か往復していたらおかしなことが起こった。お水が酒臭いのだ。確かに水道の水を入れ替えているのだが、試しになめてみると確かに日本酒だ。
私のおかしな行動をみた母が「何してるの」と声をかけた。
「母さん、この水お酒になっている」
母は怪訝な顔をしてコップをなめた。
「水じゃないの」
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