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ああ、綺麗だ。
今日もこたろうの毛は、真冬の強い太陽でキラキラと輝いている。
フワリと風で舞った毛先が柔らかそうで、つい手が出てしまう。
クシャリと頭を乱暴に撫でると、こたろうは一瞬不機嫌になったが撫でられるのは好きなのですぐ笑った。
こたろうはコロコロ表情が変わるので面白いし、可愛い。
たぶん私は一生こたろうから離れられないだろう。
そんな私が大事にするこたろうは暢気に街の中を
キョロキョロし、
大型車からモクモクと吐き出される煙に顔をしかめ咽ている。
可愛い。どんな状況でも愛らしいと思う私は重傷だろうか?
いや、末期だな。もうこれ。
私は苦笑し、どんどん雑踏へと進んでいくこたろうの後を追った。
こたろうが駆けてゆく先の人々が驚いたり後ずさったり声をあげたりしている。
ああ、もう。世話が大変だ。
しばらく驚いている人たちの反応を追っていくと交差点に出てた。
人の垣根もなくなり、こたろうの走っている後姿が見えた。
「まって、こたろう!」
私は先をゆく魅力的で目が離せない存在に夢中で気付かなかった。
青が赤に変わったことが。
周りに人がいなことを。
ラインから声を上げ誰かが叫んだ。
私は一点の意識から目覚め、現状を見た。
ああ、痛い。
凄い衝撃と音の中、こっちらの方へとこたろうが大きく目を開けていたの見た。
ああ、可哀想なことしてしまった。
私がいないと独りにさせてしまう。
ああ、可哀想だ。
暗黙が私を襲った。
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