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「やっぱり、ここからの景色は綺麗だね」
視界いっぱいに広がるのは、煌びやかに敷き詰められた地上の星。その光を瞳に反射させた彼女が、僕の方へと振り返る。
どうして、そんな瞳をすることができるのだろうか。
今日で全てが、終わるかもしれないのに。
「そういえば、今日はバレンタインデーだったよね。これ……あげる」
頬を染めながらそっと差し出されたピンク色の可愛らしい包みを受け取る。許可を得て中を確認すると、そこには大きなハート型のチョコが一つ。
口に含み、僕は味を表す為に精一杯の笑顔を浮かべながら親指を立てた。
どこか照れくさそうな表情だった彼女は、ふっきれたように立ち上がる。
「それじゃあ行くね。ホワイトデー楽しみにしてるよ」
来るかもわからない未来への約束を置いて、彼女は世界を救うために歩き始めた。
僕の口と心に、消えない苦みと、ほのかな甘みを残して――…
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