人類最強になれなかった男

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俺はそれを背後に、膨れた人質を引き連れ、入場門を後にした。 あの兵士の助けがなくとも、サキュバスは両手が獣の兵士を圧倒出来る程強い。 後はもう向こうに任せよう。 俺は広場の人混みを掻い潜り、そのまま真っ直ぐに通路に入ると、人が少ない場所までと歩き続けた。 人混みを抜けるまで、掛かった時間はおよそ5分。 人混みの所為か、衣服が崩れて不満そうな人質の腕を離すと、俺は集中して辺りを見渡した。 出店は片手で数えられる程度。 人も疎らにいる程度で、此方を見ている者もいない。 着いて来ている者もいない。 人混みだと分かり辛かったが、ここなら1人1人を認識出来そうだ。 俺は周りを確認し終えると、1度目蓋を下ろし、絶対切断の剣を持った女では無く、別の人物の位置を探る。 どうやら、丁度この道を真っ直ぐ進んだ所に居るらしい。 「行くぞミーシャ」 そう言って俺が人質に視線を向けると、射光に反射して七色に光る、水飴のような食べ物に視線を奪われ、尻尾を左右に振っていた。 どうやら、俺の声が届いていないようだ。 「ミーシャ」 「は、ひゃい!!」 俺は少し大きめの声で、人質の名前を呼ぶ。 すると、揺れていた尻尾がピンと逆立ち、同時に伸びた背筋と平行になる。 「な、なん……なに、急に?!」 流石にタメ口を覚えたか。 「呼んでも返事が無かったからな。 先行くぞ」 「え、あ……うん……」 人質の視線と尻尾がダラリと下がる。 「あれ、欲しいのか」 俺は尻尾が下がりきった人質を見て、先程眺めていた出店を指差す。 「え?!」 人質は視線を俺と合わせると、瞳をキラキラと輝かせて、尻尾を縦横無尽に振り回す。
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