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「赤色はチゴの実。
橙色はオレの実。
黄色はレモの実。
緑色はメロの実。
青色はベリの実。
藍色はブドの実。
紫色はルーンの実。
どの果物も主張が強く、食べた瞬間、弾けるように口の中に広がった。
だからと言って纏まりがない訳ではなく、それぞれ味を主張した後は、お互い譲るようにゆっくりと溶けてゆき、穏やかな風味だけが口の中に残る。
しつこい味の懸念をしていたけど、全然そんな事はなくて、オレの実とレモの実の酸味で、甘過ぎるのを上手く軽減されていた。
これは、それぞれの材料、果汁の比が、一寸の狂いもなく作られなければ食べる事の出来ない代物。
まさに、幻の1品と言っても通用するレベルの物……」
人質は飴を凝視しながら息を飲む。
グルメリポーターでも目指しているのだろうか。
「まお……お父さん、お父さん!
お父さんも食べてみてくだ……よ!
ってあれ?なんか私、さっき無意識に敬語使ってませんでした?」
「使っていたな」
まあ、敬語を禁止したのは、あの門番の兵士に不審に思われないだけの為であって、国に入ってしまえば、もう口調など気にする必要は無くなる。
気にされたとしても、普通の人からすると、「珍しいな」程度だ。
後は、魔王とさえ呼ばなければ問題は無い。
「まあ、そんな事より、早く食べてみて下さい!
凄く美味しいですよ、コレ!!」
人質が目を輝かせながら詰め寄ってくる。
「そんな事」で片付けて欲しくはないのだが、俺が水飴を1口食べるまで、何の話も受け付けてくれなそうだ。
俺は人質と同じように水飴を練り、飴を作り出すと、期待の籠った光り輝く視線を浴びながら、口へと含んだ。
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