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「え?!」
「へへっ」
驚いた人質を尻目に、マグはニヒルな笑みを浮かべ、無理やり指を閉じさせた。
「これでもう、それはお姉さんの物だからね!」
「え?ちょっと!!」
マグは人質の静止を無視すると、俺の横を通り抜け、道へと出る。
「ヘヘン、悔しかったら僕を捕まえてみなよー」
「言ったなぁ……!
あまり年上を舐めちゃダメだからねぇ……」
人質はニヤリと笑みを浮かべると立ち上がり、両手を目一杯広げて此方を煽っているマグ向けて、ゆっくりと歩み出した。
1歩、また1歩と人質はマグへと近付いてゆき、目の前まで辿り着くと、両手を広げ、マグを中心に捉えた状態のまま、腕を閉じた。
「捕まえっ?!」
「捕まらないよー」
マグは自分の体格の小ささを活かし、屈む事により、華麗に回避。
再び人質から距離を取ると、ニヒル笑みと共にピョンピョンとその場で飛び跳ねる。
「そんなんじゃ僕は捕まえられないよ!
僕は逃げるのは誰よりも得意なんだ!」
「ふふ。そうなんだ。
私も捕まえるの得意なんだよ!」
人質は虚言を言い放った後、突然走り出し、マグとの距離を一気に詰める。
しかしマグはそれを読んでいたのか、軽々と横に躱し、余裕そうに、そして楽しそうに笑みを浮かべながら、人質の背後へと立った。
「僕は絶対に捕まらないよ?」
「絶対に捕まえてあげる!」
人質も楽しそうな笑みを零しながら、振り返り、マグを捕まえに掛かる。
もちろん避けられる。
「おっと、すまないね。
ウチの息子の遊びに付き合って貰っちゃって」
俺が、終わりの見えない追いかけっこを繰り広げている、笑顔の2人を眺めていると、背後から大量の果物が盛り付けてある大皿を持った、マグの父親がのっそりと顔を出す。
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