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この人には敵わない。
そう思うと同時に、俺は1つの能力を発動させた。
相手の情報を知る能力。
ここまでの力を持っていて、人類最強と噂されただけ。
要はこの人は人類最強ではないという事。
筋力、実力、経験。
全てを逸脱しているのに、何が足りないのか。
それは能力。
幾ら能力の他が優れていても、最強の能力を前には全て無意味と化す。
マグの父親の能力は、解毒の能力。
戦闘に置いて、全くではないが、ほぼ関係は無い。
これがもし、戦闘特化の能力だったならば、俺は本当に、この人に勝つ事は出来なかっただろう。
「どうした黙り込んで。
聞きたい事があるんだろ」
マグの父親が黙り込んだ俺に対し、早くしろと言わんばかりに、急かしてくる。
嘘は無駄と判断。
嘘をついても容易にバレてしまうだろうし、何が気に触れ、いつ攻撃されるかもわからない。
こうなってしまえば道は絞られ、俺は正直に自分の考えを述べるしか、道は残されていない訳だ。
「俺は貴方に、何故この国を嫌いになったのか。
何を見て、そして何を知ったのかを尋ねようと考えていた。
が、俺が何を聞きたいのか知っているのにも関わらず、先程の流れで何も言わなかった事や、遠回しに脅して、今直ぐこの国から出て行く、という選択を迫らせているのを踏まえると、俺は貴方が話すつもりが無いように思えるのだが」
俺はそう言い切ると、周りの警戒をしながら、マグの父親を見据える。
すると、マグの父親の表情がより一層険しくなり、俺の方を向いた。
「そこまで分かっていて、何故まだ此処に居座ろうとする。
お前はまだ若い。お前が何を望むかは知らんが、その先にある結果が、お前の望む結果であるとは限らない。
死に急ごうとするなよ若者。
守るべき物の区別がつくようになってからまた此処に……」
マグの父親は話しを突然切り、俺に集中させていた気を解くと、呆れたように小さくため息を吐いた。
どうやら、見張りがいるから遠回しに言っていた訳ではなく、俺を危険から遠ざける為の、ただの善意だったらしい。
俺は警戒状態を断ち切った。
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