人類最強になれなかった男

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「って、私が幾ら、お前さんの為に脅威から遠ざけようとしても、お前は振り返りはしないんだろうな。 そのつもりがあるのであれば、最初の話しの時点で帰っているだろうからな」 正解だ。 重要な情報かもしれない物を、そう易々と逃す程、俺は馬鹿では無い。 「何も言わないってことは、肯定と受け取っていいんだな」 マグの父親は長く大きく息を吐くと、大皿を後ろから取り、俺へと差し出した。 「腹が減ってるなら食っておけ」 俺はそれを受け取ると、毒が無いかを確認をしてから、食べやすい大きさの果物を1つ、口の中へと放り込む。 「私も弱い訳では無い。 そこら辺にいるチンピラ共相手なら、1000対1でも楽々勝てる自信はある。 私はこの国が好きだ。大好きだ。絶対に捨てたく無い。 だけど、私は捨てる選択しか出来なかった。 勘の良いお前なら、もう分かるだろ」 なるほどな。 至極簡単で分かりやすい方法だ。 しかし、今の状況では俺は圧倒的に不利である。 「決闘だ。もちろんお前は受けるよな」 「ああ」 俺は考えることなく、即答で了承。 勝てば情報が貰える。 俺は目立たずに勝つ方法を、幾つか頭の中で即座に練る。 場所が路上であれば、マグの父親も本気は出せまい。 それなら、こちらが全力を出さずとも、偶然に隙を突いた振りをすればいい。 ただの民間人材には紛れ当たり。 熟練者には狙っていたと分かるだろう。 「それじゃあ着いて来い……」 マグの父親は敷居の上で立ち上がり、部屋へと身体の真正面を向ける。 これはあれだな。 「路上じゃないのか」 「当たり前だ。 路上で本気出してしまえば、辺りが粉々になるだろ」 どうやら俺も、ある程度本気を出さなければいけないようだ。 外から見た景色だと、戦闘するような施設があるとは思えない。 ということは地下か。
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