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「あれ?パパ!悪者みたいに恐い顔したお姉さんのお父さん連れて何処行くの?」
増えてるし、まだそう呼ぶか。
流石に父親の前で人の事をそう呼ぶと、怒られるだろうな。
というより、この顔の父親を持って、よく俺の顔を怖いと言えるな。
「ああ、今から悪者みたいに恐い顔したお姉さんのお父さんと、地下道場で手合わせして来る」
あんたには言われたくない。
「僕も行くぅー!!」
「いいが、お前はお姉さんと遊んでたんじゃないのか?」
「うん!でも、お姉さんもう動かなくなったから」
俺とマグの父親は、マグの指を目で追い、その先へと視線を移動させる。
人質はサスペンスドラマの殺され役の如く、片手と両足を伸ばし、無動でぐたりと地面に伏していた。
「む!大丈夫か?!」
マグの父親が、慌てて動かなくなった人質に駆け寄る。
そして、首筋に指先をあてて脈を取り、フリーの片手で人質の額に手を当てる。
今日は太陽が出ていて、気温が少し高い。
それに、久々の運動なのにも関わらず、自分の限界以上に動き回った。
軽度の熱中症みたいなものだろう。
「身体が熱を帯びている。
これは帯熱病だ。
お母さん!早急に水と氷を用意してくれ!」
「はい!」
何処からともなく声が聞こえてきたかと思うと、果物置き場の一角にある、スイカのような果物が突然立ち上がり、動き出した。
何故そこにいる。
そして全然気付かなかった。
「いや、いい。
俺が治す」
俺は倒れる人質に歩み寄ると、首筋に触れ、目を閉じ症状を探る。
脱水に帯熱、目眩に頭痛だな。
俺は全てを瞬時に治すと、口を開いた。
「治したぞミーシャ」
「……すいません、ありがとうございます。
まさかここまで体力が落ちていたとは……」
人質は膝に手を置き、ゆっくりと立ち上がると、服に付いた砂埃を払う。
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