No.10 [2016/01/19]

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----- 2016/01/12 -------------------- あるビジネスホテルの一室。 備え付けの机に向かう男が一人。 ノートにボールペンで文字を書き付け、あーでもないこーでもないと唸っている。 ブブッと男の携帯端末が震える。 手に取り確認するとメッセージ。 「かMレま4Gハハハ」 それをノートに書き写す男。 周りに日本語や数式、アルファベットがさらさらと記述されていく。 コンコン。 ノックの音に続きスススとドアの隙間から紙が差し入れられた。 男は席を立ちそれを拾い上げた。 「かたタタタCわ7むヌヌ」 その紙を机上のノートと照らす。 男は眉を寄せ目を細め、こう漏らした。 「わけがわからない」 ----- 2016/01/13 -------------------- 車道の脇にある道から山へ分け入り、中腹にある公園を目指す。 土が階段状に整備され、距離もそう長くはない。 しかしながらコートが必要な寒さと日頃の運動不足である。 意気揚々と上り始めたもののあっという間に息切れ。 呼吸しても呼吸しても酸素が足りない、気管が冷えるばかり。 ヒューヒューと息を吸っては吐き、勘弁してくれと駄々をこねる足を前へ出す。 こんなタイミングでもなければ運動なんてしないのだ、ちょうど良い。 降りてくるおばちゃんと「こんにちは」と挨拶を交わしつつ、すれ違った。 息は全く乱れていなかった、運動慣れしている人なのだろう。20歳ぐらいは年上だろうに、いやはや日頃の鍛錬の差だ。 脚の筋肉が疲れ切りホッカイロのように熱をもった頃、やっと公園についた。 粗末で今にも壊れそうな木で出来たテーブルとベンチがある。 ザザッ。 座って休もうかと思うと音がした。 リスかヘビか。 ザザッ。 また音がした。工事中で立ち入り禁止になっている山道のほうから聞こえるようだ。 ザザッ。 ザザッ。 遠くなったり近くなったりと、まるでこちらを呼び込もうとしているようだ。 よし、好奇心には勝てない。 音の正体を探るべく、立ち入り禁止のロープを乗り越えた。
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