No.10 [2016/01/19]

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----- 2016/01/16 -------------------- アスファルトの上に一本のナイフが転がっている。 太陽が沈み紫から黒に変わろうとしている。 カタカタとナイフ微細な振動。 地面から少し浮きあがり、音もなくナイフが動き始める。 虫が這うような生物的な動きでナイフを移動する。 帰宅の車の音が遠く聞こえる静かな住宅街をナイフは這い進む。 やがてひとつの家に辿り着き、ドアを這うように登るとカチャと小さな音を立てポストから中へ侵入していった。 しばらくして、家の中から暴れるような音が少し聞こえ、静かになった。 ポストから出てきたナイフには、血が不着している。 ドアや道路に血の道が残る。 ナイフは夜道を這い、闇の中に消えていった。 ----- 2016/01/17 -------------------- 宇宙漁船バルディエル号は、この日、釣りをしていた。 宇宙空間から高硬度の特殊ワイヤーを惑星ODN44に垂れる。 ODN44は全体の97%が硫酸の海で構成された、海の惑星だ。 宇宙漁船は様々なものを<<釣る>> 魚類はもとより、衛星やデブリ、宇宙船に果ては小さな星まで。 今日は硫酸の海から、主を釣ろうというのだ。 惑星の時点にベクトルを合わせたバルディエル号。 腐った泥水のような海をぐるぐるとかき回すワイヤー。 液体で満たされた海の惑星には、必ず主が存在する。 ワイヤーの先が何かに引っかかった。 引っかかるものは一つ。主だ。 船の舵を微妙に切りワイヤーを引っ張る。 水面に小さな島ほどはあろうかという巨体が見えた。 主だ。 巨大な、<<金のカタツムリ>>
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