高級ベッド

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高級ベッド

 長年使っていたベッドが壊れた。  どうせ自分が眠るだけだから、安物で構わない。そう思っていたけれど、周囲にあれこれ勧められるうちにその気になり、休みの日に、ちゃんとした家具店にベッドを見に行った。  声をかけて来た店員に色々聞きながら、展示されているベッドを一つ一つ吟味する。  大きさ、色合い、もちろん寝心地も気になるな。 「よろしかったら、横たわってみますか?」  申し出に遠慮なくうなずく。  なるほどなるほど。安物でいいと思っていたけど、いい品は全然違うな。しかも一つずつ色んな差がある。  こっちはともかくふかふかだ。別のベッドはむしろ若干の固さが売りらしく、沈み込まない寝心地が気持ちいい。  これは暖かささ重視みたいだな。こっちは触り心地がともかくいい。  迷っていると、店員の携帯が鳴った。何やら急用らしく、俺にその旨を告げて席を外す。  側に誰もいないから、一層遠慮なく、俺は置かれたベッドに転がりまくった。その中の一つがたまらない寝心地で俺の意識を眠りに誘う。  買い物途中だ。眠ってる場合じゃない。でもこのベッドは最高だ。横になった途端に眠くなって、もう、瞼が開かない。  意識が沈む。ん? ん? 何だか体も沈んで行く気が…あでも、もう何もかもどうでもいい。 「お客様、お待たせいたしました…? お客様? …何だ。結局ひやかしかよ」  店員の忌々しそうな声。それを俺は、全身を頭まですっぽり包む布団の中で聞いた。そしてそれきり、俺の意識はぷつりと途絶えた。 高級ベッド…完
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