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遠くまで歩いて色々な所に行った。草原、森林、山脈。あいつらは、こんな良いものを独占していたんだ。狡い、だがこれからは俺の物でも在るわけだ。
そして、解ったことがある。ここは壁に囲まれていた。壁の中は見尽くした。解っているんだ、壁の向こうから来ている存在も居ることを。何でそいつらだけ外に行けるんだ。羨ましい、憎らしい。
壁の向こうから来た存在だって、おんなじだ。独占なんてさせない、絶対。だから、俺は偶然見かけたそいつらに、つるはしを振るった。そして、その中の一人は倒れた。でも、もう振るえない。腕の限界だ。
「外だという事の意味を解っているのか」
そいつらの一人が俺に話しかけてきた。何を言ってやがる、おまえらだけ外を得られるのは狡い。何で、おまえらだけなんだ。
「それ以上外は無いんだ。脆弱な精神には、リミッターをかけなくては。在るようにしてそう在るのだから」
そんな事は聞きたくない。無我夢中で目の前の肉塊を探る。方法は何処だ、どうやったんだ。
「無駄だよ。君の世界は狭くなるだけだって」
こいつらが憎かった。だから、今度は腕を取り替えることにした。そうすれば、何度も何度も、肉塊にしてやれる。
肉塊ばかりになった頃。閃いたんだ。あの壁をこのつるはしで穴を空ければいい。
穴を空けた。やっと、外側を目指すことができる。期待を込めて、穴を覗きこんだ。
外なんか無かった。ため息をついて、頭を引っ込めた。これで完結なのか。
もうすでに、全域を見ることができる。それ以上は無いのか。いや、まだ上があった。
俺は全体を見て、最も強い足のもとへ。おそらく居る上のやつらにも、独占なんてさせない。
たどり着いたら、することはもう決まっている。足を奪って、ざまぁみろと。
その足は、また違った景色を見せてくれた。上から見た景色は、また違っていた。けれど、上の世界なんて無かった。
本当にこれで完結していたんだ。
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