阿部《あべ》春奈《はるな》編

27/62
前へ
/3000ページ
次へ
「そうなのよ。 とってもわがままなお客様がいてね。 両方をいっぺんに食べたいんですって」 新たに持って来てくれた紅茶は 今度のはアールグレイのストレートティー。 「はぁ・・・・。幸せ・・・・・」 自分の幸せを求めてここに来たのに。 すでに自分自身が満足しちゃってるが。 そこには気が付いていないようだ。 「ケーキも亜美さんが作ってるんですか?」 「そう。なるべく作れるものは 自分で作ってお出ししようと思ってね」 亜美の座るテーブルの上には レモンティーしか置いていない。 「亜美さんは食べないの?」 「私?私は毎日残り物を食べてるもの。 今日の残ったものは 春奈ちゃんに押し付けようかな」 イタズラっぽく言う亜美。 きっと揶揄っているのだろうが 「持ってく!」 それに気が付かないちゃっかり娘。 ふふ、って笑ってくれた。
/3000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3016人が本棚に入れています
本棚に追加