3016人が本棚に入れています
本棚に追加
オーブンのふたを開けたとたんに
開ける前よりも濃いミルクのニオイ。
それにノックダウン寸前の春奈。
スーハースーハーと
豪快に鼻の中に空気を取り込んでいく。
「いいニオイぃー!
この匂いで男の心を鷲掴みできないかな」
「できるんじゃない?
パンがお好きな人ならなお更」
「そっか。彼が来る直前に
オーブンから取り出すように調整して・・」
春奈の意識がどこかに行った。
何らかの作戦を頭の中で立てているようだ。
亜美は鉄板の上から
網棚の上に焼けたパンを乗せて行くが
「春奈ちゃん戻ってきて。
まだお仕事は残ってるのよ」
笑って春奈に声をかけた。
「あハイ!すみません」
ハッと我に返った様子の春奈も苦笑。
「このバターを刷毛で
1個ずつパンの表面に塗ってちょうだい」
少し融けたバターを刷毛にこすりつけ
それを焼けたパンに塗って行くと
焼きたての熱でバターが融けていく。
光沢が出て
パンがピカピカになった。
最初のコメントを投稿しよう!