阿部《あべ》春奈《はるな》編

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焼きたてのパンと言うことで 紙袋の口を開けたままでいると 「ふわぁー。いいニオイ」 トラックの中がパンのニオイで充満していく。 「はは、このトラックの中が いいニオイなんて初めてだな」 運転席で笑う明宏。 「柿沼運送ってことは 柿沼さんのご実家が運送会社さん?」 「そう。俺と弟も一応社員。 弟なんてバイクの免許を取ってから ずっと仕事をしてるよ」 柿沼運送と言えば そんなに大きくはないが有名だ。 関東だけが営業地域のようで バイク便の方が主だっているようだ。 「じゃあ平日休みになるんですか?」 「そうでもないんだよね。 年がら年中忙しいから、 週末は交代で休んでる」 「でも亜美さんがお店を営業してるから 平日の方がいいんじゃないですか?」 疑う気持ちもなく 2人は交際していると思い込んでいた春奈に 「俺と亜美、付き合ってはいないよ」 明宏からは突拍子もない言葉をもらった。
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