鈍感な僕と、淋しがり屋の君。

6/12
前へ
/12ページ
次へ
空腹がひっくり返って腹立だしさに変わり、数本並んでいた缶のうちのひとつを掴んで冷蔵庫を閉めた。 そのまま自分の部屋に入り、缶を開ける。勢いよく喉に流し込み、強めの炭酸にむせながら涙を流した。 部屋に物は少ない。僕は元々部屋に物が溢れているのが気にくわなくて、必要最小限の物しか置かないんだ。 そんながらんどうの部屋が、無性に淋しくなった。 逆に彼女はコレクターかと思うくらいに物を集める、揃えるのが好きで、彼女の部屋は物で溢れている。ただ整理整頓が上手い人で、散らかっている感じがないのが、好感だった。 ……缶の中身は、半分ほどだろうか。 リビングでまた物音がして、顔を上げる。どうやらシャワーを終えたようだ。 そこでテレビをつけたままだった事に気付いた。まずい、彼女はそういう所、厳しい人だ。 リビングに行って今からテレビを消すのは不自然だろうか。それとも彼女に一言「ごめん」と言って、リモコンを握ろうか。このまま部屋にこもるか……。 数刻悩んだ末、部屋のドアを少し開けて、リビングの様子を覗き見た。 彼女はさっきまで僕が座っていたソファーに腰掛け、またテレビを眺めていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加