鈍感な僕と、淋しがり屋の君。

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結婚して、三年経った。 僕らは近所の人にも暖かく見守られ、幸せな夫婦生活を送っていた。 子どもはいないけど、彼女が望むなら僕は協力を惜しまないし、僕らの子どもを見てみたいと、会ってみたいと、触れてみたいと思う。 僕は彼女を愛していたし、彼女もそうだと思っていた。 そう、いつからだろう。 いつからこの気持ちは、一方通行になっていたんだろう。 仕事のすれ違い? 趣味が合わないから? 私生活のズレ? いつしか僕は彼女の視界に入らないように行動するようになった。 帰宅しても彼女は帰っていない事が多くて、僕は手短に食事や風呂を済ませて部屋にこもる。 何故、こうなってしまったんだろう。 会話もしていない。 最後に彼女と交わした言葉は、なんだっけ……? 『……あんたなんて、居なくなっちゃえばいいのよっ!』 涙が混ざる震えた声。 彼女の細い肩が震えて、僕を睨み付ける瞳は悲しく濡れていた。 返す言葉が見付からなかった僕は、声が震えそうになるのをこらえて、君を見つめるしかできなかったんだ。 「……ごめん」 あの時こぼれた謝罪を、僕はもう何度繰り返しただろう。
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