鈍感な僕と、淋しがり屋の君。

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少し、眠っていたかもしれない。玄関の方で小さく、カタンと物音がした。 気のせいか? 顔を上げて時計を見上げる。結婚式の時に友人に貰った壁掛け時計だ。針は日付をちょうど変えたところだった。 気のせいか? 靴を脱ぐ音、柔らかなスリッパの床を滑る音、小さな……「ただいま」の声。 いや、彼女だって僕と同じく、この家の住人なのだから、帰宅してきてもおかしくないじゃないか。 問題はこの時間まで何処へ行っていたのか。仕事か? いや、彼女はこんな深夜まで働く職場には勤めていない。 ソファーで膝を抱えたまま、彼女の物音に気を取られ、動けない。顔を合わせるのは、いつぶりだろう……。 リビングの扉が開く、と彼女は一瞬足を止め深く深くため息を吐いた。 「……またやっちゃったかぁ」 なんの事だ? そう思う間もなく、彼女はソファーの前のガラステーブルに置かれたリモコンに手を伸ばし、止まった。 ……あ、僕が邪魔かな。 体をずらそうとして、また固まる。彼女はリモコンを手に取らず、テレビを見ていた。 番組はニュースから、映画情報になっていた。 そういえば、君は映画が好きだったね。
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