鈍感な僕と、淋しがり屋の君。

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恋愛もの、ホラー、ファンタジーなんかを好んで、一緒に映画館に行ったのも数えきれない。 彼女はテレビをそのままにして、キッチンへ入っていった。 僕は膝を抱えたまま、またぼーっとテレビを見る。この映画好きそうだなとか、僕も観たいなとか、頭の中でゆっくりと廻る。 すぐにキッチンを出たようで、彼女は食事を外で済ませてきたんだろうと思った。 なんだか急に、腹が減ったような気がする。久々に彼女の顔を見たからだろうか。……いや、僕は彼女の顔を見る事はできなかった。 彼女がバスルームへ入って行ったのを音だけで確認して、僕はやっと足を下ろし腰をあげた。 キッチンに入り、冷蔵庫を開ける。 「……あれ?」 冷蔵庫には、あまり食べ物は入っていなくて、でも缶ビールが数本入っていた。 彼女は酒が飲めない。 なのに、なんで? 僕は買ってきていない。 なのに、なんで? まさか、という思いが物凄い早さで頭の中を駆け抜けた。 まさか、まさかまさかまさか……。 僕じゃない誰かの為に、用意してあるのか? 僕が家にいない時に、誰かを、男を連れ込んでいるのか? それは、浮気なのか……?
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