そびえる『壁』は絶対的で

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「動くな」 日本語が通じるとは思っていないがとりあえず言って、後は威圧で真意を伝える桐弥。老人二人は額に銃口を当てられながらゆっくりと手を上げ、降伏のサインを出す―――と、桐弥は思ってしまった。 老人たちの片手が桐弥の手を掴み、ただ小指の先が深紅の銃に触れた瞬間ガラスのように、桐弥の『顕現魔装』が粉々に霧散してしまったのだ。 驚愕するより老夫婦の動きが速かった。掴んだ腕を手繰り寄せて懐に潜り込み、まるで鏡越しのように左右対称の挙動で桐弥の腹にエルボーを叩き込む。 「うぐ…!?」 老人と思い油断していた桐弥の腕を離さないまま老夫婦は歳に見合わない軽快な動きで腕に手足を絡ませ抱き抱える。 「ッ…」 腕ひしぎを決め、一気に腕をへし折るべく体を反らす。 が、桐弥はそれを許さない。老夫婦二人の渾身の力を、純然なる腕力のみで抗う。 「…………」 ゴガギィッッ!!!!と。 老夫婦を引っ付けたまま腕を正面に勢いよく合わせるように振るい、老夫婦を互いにぶつけ合わせた。 「おおぅ、ご老人なのに……………む?」 見ていたアーデルが眉を寄せる。 頭部をぶつけた老人たちは痛みに表情を歪めはしなかった。その顔には細かい亀裂が走り、パラパラと破片が宙に散らばる。
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