そびえる『壁』は絶対的で

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「ええ!人じゃないの!?」 「どう見ても違う。きりや!」 クレナの鋭い声を聞いて、桐弥はスッとその場に片膝を付き、未だ腕ひしぎを決め折ろうと頑張っている老夫婦は気にせず両腕を真上に上げた。 ―――直後、地面に落ちる凄まじい激突音が連続で響き渡り、吹き荒れる土煙とともに周囲に飛散した。 「科学の進歩かな。怪しまれないように普通の人間みたいに表情や仕草までインプットされてるみたいだけど、痛みが無くてよかったよ。ロボットとはいえ老人の姿をしていると気がひけてしまうからね」 最早爆音に近い音の中で呟く桐弥の腕から老夫婦が引き剥がされた。損壊が酷く、首から上はもうほとんど原形を失ってしまっている。 これで終わり……と思った桐弥は、直後にその考えをかなぐり捨てる。 老夫婦の腹部に点滅する赤いランプがあった。さっきまで気づかなかったが、今しがた点滅したのだから仕方ない話ではある。だけどその点滅の意味はすぐに察した。 「自爆するのか…!?」 「桐弥ー!!上に投げろー!!」 メイミンの声だ。桐弥は確認を取らずに動かなくなった老夫婦をひっ掴み、真上に放り投げた。爆発の規模がわからない以上は上に投げるしかない。でもどれくらいの高さなら安全なのかもわからない。
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