そびえる『壁』は絶対的で

40/42
4689人が本棚に入れています
本棚に追加
/314ページ
「お待たせしました、間に合いましたか?」 人類最強。 極限の正義。 英雄の頂点。 あらゆる名誉ある名を欲しいままにした美しき『純白』が、静かにその地に舞い降りる。 「相変わらず、時間にルーズだね」 やれやれと肩を竦めながら桐弥は言った。 「今から始めるよ、"勇者さま"」 「ふむ。では始めるとしましょう。久しぶりの戦闘ですので、ボクも少々本気で行きます」 黄金に輝く『宝剣』の一振りを引き抜いて、白い髪をかき上げながらに宣言した。 ―――その日には、一報は世界を駆け巡る。 ギリシャでも有名な山が消し飛び、そこを根城にしていたテロリスト《アストライオス》の本部はものの数一〇分で壊滅の文字を叩き付けられた。 このニュースは瞬く間に拡散され、『前哨戦』が起きた日本にも忽ち広がる。これにより『前哨戦』は話題から静かにゆっくりとフェードアウトし、人々の意識の外へと追いやられてしまうことになった。 「………別によ、表彰だの取材だのでちやほやされたいって訳じゃねーんだがよ」 「………そーよね、こうもあっさり消え去られると私らの頑張りに意味がなかったみたいに思えてくるわ。めんどくさいからいいんだけど」 「それは仕方ないだろう、あの勇者たちの話題にはさすがにな」 「私は寧ろ静かな方が好きだから気にならないわね」 「あ、わ、私もです…」 「湿っぽい空気は無しにしようよ。あと勇者の話は即刻やめるんだヘドが出る。今はあの激闘のことは忘れて、しっかり楽しまなくちゃ」 小さく笑って、並んで正面を向いて、大きく息を吸い込んで、綺麗な青い景色を眺めながら、少年少女は高らかに叫んだ。 「ビキニ美女ーーーーー!!!!!」 「『海だー』じゃないのかよ!!!」
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!