第1章

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俺は引きこもりだった。 別に虐めを受けてとか、重病にかかっていたとなそんなことはない。 人と関わりたくなかったのだ。 小学校に通っていた時だ。 ある日俺の唯一といっていい友人が体育の授業中に怪我をして保健室に運ばれた。 そいつは明るい性格で面倒見がよくて、俺とは正反対によくできた人間だった。分け隔てなく人間と付き合いを持とうとしていた。 ただその日、保健室に運ばれた時だ。クラス内の雰囲気に違和感を覚えたのは。 何処かよそよそしい。何かを気にしているような、何かに恐れているような空気があった。 結果を言えば虐めだ。 そいつは虐めにあっていて、それが目に見える形で行われた。 次の標的は自分かもしれない、と恐れていた。 救い出そうとする人間は現れなかった。 嫌悪した。気持ちが悪かった。 友達だと言っておきながら、自分の身が大事で他人を切り捨てる。 そんな所を見て俺は人付き合いというものに疑念を持った。 次第に全てが上っ面だけの関係に見えてきた。 親友という間柄であろうと、相棒という間柄であろうと、恋人という間柄であろうと、夫婦という間柄であろうと。 何か型ではめられたような、軽々しいものに思えるようになった。 そこからだ。俺が他人というものに興味を無くしたのは。 そして始まった。 人が人に見えなくなった。 透明人間になった。 最初は視力を疑った。しかし、教室の後ろからでも黒板の字は見えた。 次に錯覚を疑った。けれど、盲点と関係なく人が見えなくなった。 結局俺は疑うことをやめて家に篭った。 人が見えないならもう人と付き合う必要もない。 俺は不登校児となった。
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