第1章

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それからもう10年近く学校というものに行っていない。 そんなある日、俺は外に出た。引きこもって生きていても、生きるためには外に出なくてはならない時がある。 食糧確保の為だ。 ただ、外にでたところで、そこには誰もいない。 車が無人で走り、自転車が自立し、声だけが聞こえてくる。 自分が出した金が宙に浮く姿は何とも不気味だ。人がそれを持ち上げているのは分かっているのだが、どうにも慣れない。 その帰り、俺は何かにぶつかった。 何もない場所でいきなり衝撃を受けた。 当然人にぶつかった。 謝ればいいのだろうが、何処にいるの分からない。声が聞こえる方に一応謝罪だけしてその場を去った。 しかし、その後すぐに俺は何かに引っ張られて路地裏に連れ込まれて殴られた。蹴られたのかもしれない。ただ分かるのは憂さ晴らしに暴力を加えられたというだけだ。 殴られ終わり、路地裏で気を失っている所を誰かに助けられ病院に運ばれた。 そこで俺は盲人病という病名を着けられた。 目が見えないのが盲目ならば、人が見えないのは盲人。 それからは新病の研究という題目で俺は牢屋のような病室に入れられ、今に至っている。 それからというもの、する気の無い健康調査や精密検査。新聞記者に質疑応答を懇願されたこともあった。 素っ気ない、興味のない、差し障りのない言葉を連ねて新聞記者には答えた。精密検査も異常はなかった。 人と関わりたくないからちょうどいいと思っていた牢屋も、ちょくちょく看護師らしき人が来るから平和でない。 さっさと家に帰りたいものだ。 入院してから数日して友人が来た。 どこから知ったのか見舞いに来たようだ。しかし、その友人の姿も俺は見ることが出来なかった。 どんな格好をしているのか、どんな表情をしているのか、どんな髪型をしているのか、背丈はどれくらいなのか、俺には全くわからなかった。 最初、友人からはよくある励ましの言葉が掛けられた。 それから友人の身の回りのことを聞かされた。 高校受験だか、恋人ができたとかそんなこと。 話を終えた頃には話し相手が見えないことへの申し訳なさも消えていた。
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