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翌日、七美は今日も清田さんと外回りだ。
可哀想に……。
そう思いながら、デスクで自分の仕事をしていると、背後から聞き覚えのある声がした。
「ゆっきー」
ワタシのことを「ゆっきー」と呼ぶのは、大学時代のテニスサークルのメンバーだけである。
振りむくと、社長の姪っ子であり、ワタシにこの会社を紹介してくれた智香先輩がいた。
「智香先輩! お久しぶりです」
「ゆっきー元気にしてた?」
「はい。智香先輩こそ、お元気そうで何よりです。それより今日はどうかしたんですか?」
「うん。実はさぁ、結婚を考えてる人がいるんだけど、両親が良い顔しなくてさぁ」
「ええっ! 智香先輩、結婚するんですか?」
「まだ本決まりじゃないんだけど、したいと思ってて……それでね。叔母さんにうちの両親を説得してもらえないかと思ってお願いに来たんだ」
「そうなんですか」
「うん。叔母さんは、私のお願いなら何でも聞いてくれるからね」
「へぇ~可愛がられてるんですね」
「そうだよ。ゆっきーの就職の件だって、簡単にOKしてくれたんだから」
「ああ、その節は有り難うございました」
智香先輩がこの会社を紹介してくれたおかげで、七美と一緒にいられるようになったのだ。
ゆつきは本気で頭をさげた。
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