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―――――――――――――― ―――――― 「…………」 自分にこれほどの行動力があるとは今まで思わなかった。 フランス、パリの空港に降り立って、我ながら自分らしくない行動に茫然と立ち尽くす。 回りは金髪白人の比率が異様に多い。 当たり前だけど。 別に、海外が初めてというわけではないけれど、フランスでしかもツアーやグループでもなく単身で向かうのは初めてだし、決して語学が堪能というわけでもない。 寧ろフランス語はさっぱりだ。 金種もよくわからない。 なんで寄りにもよってフランスなんだ、と頭が痛いが躊躇っている余裕はない。 わざわざ不慣れな海外まで出向かなくてもせめて手紙を送るとか、一応は僕も考えた。 しかし、どうしてこんな無謀なことをしたかというと、居てもたってもいられなかったのだ。 知り合いの画家にデッサン旅行に誘われただの、やっぱりこっちは肌に合ってるだのと嬉しそうな絵葉書を見たら、駆け付けずにはいられなかった。 イケメンかもしれないがあんなオッサンに失恋したばっかのくせに、まだ懲りてないのか! いや……それとも。 画廊をやめて日本を離れるくらいだから、それほど辛かったのかもしれない。 寂しかったのかもしれない。 傷心を癒すために、新しい出会いに身を委ねてしまうくらいに。 ……やっぱり、一人になんかするんじゃなかった。 初めてのパリで、空港から出るのも躊躇うくらいに実はかなりびびっているが、ぐずぐずしている場合じゃない。 早く夏希さんを見つけ出さなければ。 「……大丈夫。英語なら多少はわかるし、なんとかなる」 余計なことはしなければいいのだ。 道もよくわからないが、金だけは出来るだけ持ってきているしタクシーで一直線にこの絵葉書のアドレスまで行ってもらえばいいだけだ。 それほど難しいことではないはず。 そう自分を励まして、漸く外へと一歩踏み出した。 「パリも、雪かあ」 雪を見ればいつも夏希さんを思い出してしまうのは、きっと彼女の弱さを始めて知ったあの風花の日が思いのほか胸に焼き付いているからだろう。
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