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夏希さんの手が、僕の手を引き寄せた。 その時初めて、自分の手が震えていることに気が付いた。 寒さで凍えたせいかもしれないし、慣れない海外でやっと夏希さんに会えた安堵からかもしれないし。 貴女に気持ちを伝えた、緊張のせいかもしれなかった。 だって、今更だって呆れられるかとばかり、思っていたから。 だから思いもよらない夏希さんの仕草に、ただ茫然と見とれていた。 冷たい指先に、ほんのりあたたかい息ががかかり、柔らかな唇が触れる。 「私も……あなたのことが好きよ」 ずっと聞きたかった彼女の心に、僕の中の緊張も不安も全部、風に煽られた粉雪みたいに散っていく。 その一言で全部が報われて 全部が許された気分だった。 今すぐ抱きしめたくて無意識に手が延びる。 眠る貴女にではなくて、ちゃんとキスして覚えていて欲しい。 けれどそんな欲求よりも早く、夏希さんの顔が近づいた。 彼女が背伸びをしたのだと、気付いた時にはもう、唇同士が触れあっていて。 「…………」 薄く目を閉じた、貴女の顔が視界を埋める。 なんだか先を越された気分だったけど、唇の柔らかさには勝てなくて僕は大人しく目を閉じた。 大事なところで主導権を握るのは、間違いなく彼女の方だ。 多分この先もずっと、僕は彼女に頭が上がりそうにない。
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