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――やれば出来る、か。
正直言って、そういう感覚とは少し違う気がしていた。何がどういう風に違うのか分からないが、冬の夜風に当たっていると、それすらどうでもよくなってくる。なんせ、今日は上司の家での飲み会だ。緊張しないと言ったら嘘になる。
「緊張してるでしょ」
その心を読んだかのように、同僚の森がコッソリと声を掛けてきた。それを合図に、少しだけ団体から離れる。
「んー、少しね」
「……だと思った」
「なんで?」
「バッグ持ってる手が硬い」
森が、ピシッと原部のバッグを指差して言う。
「……さすが」
「伊達に同僚やってませんよーだ」
ふふん、と彼女が得意そうな笑みを浮かべる。その笑顔は美人として有名になるにふさわしい笑顔だった。
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