――― 第一章 ―――

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「そういえば、坂本さんのお子さん、来月五歳になるんですって」 「うわー、さすが情報屋。どこで仕入れてくるのそう言う情報」 「情報網の広げ方にはコツがあるのよ、って」 森が、口元に人差指を当てて「しーっ」と悪戯っぽく笑みを浮かべる。これが男を何人も落としてきたプロの笑顔か、と若干慄いていると、先輩が「お」と上機嫌な声を上げた。 「着いた着いた。……よーし、今日は遠慮せずガンガン飲んじゃっていいからねー」 んんー、と伸びをしながら、灯りが煌々と点いている家の門を開けて敷地に足を踏み入れた。それに続いて、飲み会メンバー十数名が次々と敷地に入って行く。 「さかもとーぉ」 先輩が甘えるような声を出しながらインターホンを押すと、大きな玄関の向こう側から原部の上司である坂本さんが顔を出した。
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