―― 序章 ――

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「……」 「……」 灯りの消えた部屋。 重いカーテンの隙間から差し込むひかり。 「……あ、」 頬に彼の大きな両手が伸び、優しく包み込まれる。至近距離で熱っぽい瞳に捉えられ、ぎゅうっと胸の奥を掴まれるような、甘く切ない感情が広がる。 不意に、その瞳に映る自分が揺れ、 「………っ、」 そっと唇が重なる。昨日よりも、少しだけ長いキスになった。 そして、 「……ん、」 優しく、そっと舌が射し込まれる。思わず逃げ腰になったあたしの頭を支え、坂本さんはたっぷり10秒間ほどキスをした。わずかに唇が離れた瞬間に、言葉をねじ込む。 「…坂本さ、」 「言わないで。……今は何も言わないで」  そしてまた、温もりが重なる。何度も何度も角度を変えて重なる柔らかな温もりに、徐々に意識が遠のいていく。 ――もう、いっそ、このまま。 静かで、少し冷たい朝は、もうすぐそこにやってきていた。
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