――― 第一章 ―――

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「あたしが!?」 残業になるかもって言ったじゃん! と内心ツッコみつつ、――それはあれか、要するに頑張って終わらせろと。 「行きたいです、」 でも、と言う前に、山口くんは満面の笑みを浮かべて「じゃ、決まりですね!」と手を鳴らす。その声で、部屋の奥で休憩していた何人かがこちらを振り返った。原部は山口くんの決定の速さに若干呆れつつ、少し救われたような気持になる。そうやって少し強引にでも誘われなければ、前回の飲み会の時のように「仕事があるから」と断っていたはずだった。 ――メリハリを大切にしろよ。 入社する前、大学の先生に言われた言葉を不意に思い出す。……たまには休憩も必要、ってよく言うし。辛いことの後に何か楽しいことがあると分かっているのなら、目の前の辛ささえ何でもない。
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