雪だけが知っている

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そんないつもとは違う道を踏みしめながら神社にたどり着くと既に到着していたらしい優が鼻を真っ赤にしながら俺を見つけるとはにかみながら小走りで寄ってきた 「そんな鼻赤こうして…神社の屋根に入ってたら良かに。」? 「待ちきれんかってん。」 そう言いながら瞳を緩める優はいつもより一層儚げで胸がざわつく 「突然、電話してきてなにかと思ったら外でよて…ビックリしたわ。何かあったん?」 「んーん…何も無かよ。ただ、しーちゃんに会いとうなったんよ。」 なにかを誤魔化すように笑う優を見ていられず手を強く握った 「それだけじゃ無かろ?正直に言ってみ。」 するとくしゃりと顔を歪ませ下手くそな笑顔になりながら小さく言葉を溢した 「こんな寒いなか皆外には出えへんやろ?今なら誰の目も気にせずしーちゃんに会えると思うて…。ごめんな、しーちゃん寒いの嫌いやのに…。」 そう言う優の瞳にはどんどん涙が浮かんでいき今にも瞳が零れ落ちそうになっている 「嫌やったら来んよ…そんな俺に気使わんで良かと。」 照れ隠しで頭をわしゃわしゃと撫でながら顔を覗き込むと優が笑った拍子に瞳に溜まった涙が頬を伝い足元の雪を溶かしていった 友達や親にこの関係を言うこともできずかといってこのままでは居られないのを奥底ではわかっていながら、今だけはーと冷えきった頬に手を添えて白い息ごと飲み込んだ 雪だけが静かに二人を見守っていた
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