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夕食後、話の続きを始めた。
「私たちは意志疎通できる。つまりテレパシーで会話できます。月の光を“珠”に蓄積すれば、古来から伝わる秘術を使う時の源になります。
制御するには時間がかかりますが、伊織は20才だから幸いでしたね。大人になってから月の光を操るのは感情が安定していますから、比較的、容易なんです。」
「なぁ、透子は幾つ?学生?僕は透子のこと、何も知らないよ?」
「ふふふ。では私の心を読み取ってみて?私も伊織のチカラを把握したいです。」
チカラ?よくわからないけど、言われるがまま、キラキラした金色の瞳をロックオン。
その様子に、内心で安堵する透子。伊織の銀色の瞳が光ったのを、本人は気付いていないのだ。
黙って見つめ返す透子の瞳は、成り行きを見守る慈愛の色だった。
流れてくる感情、
押し寄せる激情、
沸き上がる欲情。
そして、生まれたての愛情…
早送りする動画のように流れてゆく。透子の姿が幼少期から青春期へ移りゆく。あどけなさが残る顔に翳りが見えた。触れ合う人たちが去りゆく姿に追い縋れず、運命を受け入れた透子の葛藤に、両親との別れ。
大人びた笑顔に成長した今の透子が、何だか痛々しく思えた。
「透子、セーラー服も似合うよ。今はフリーター?ウエストレス?両親は幼い頃に亡くなってるんだよね。辛い思いを抱えて一人で生きてきたんだな。」
柔和な微笑みを浮かべた透子が目で頷いた。
「伊織は表面上の渦には巻き込まれなかった。私の奥底にある本質を裏側を覗いた。伊織のチカラは私に劣らず優れています。」
「そ、そう?あ、ありがとう?」
初めてチカラを使った僕は、ぎこちない言葉使いになった。
そんな僕をクスッと可愛く笑った透子が、1つ年下だと知った。
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