運命の曲がり角

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今宵は新月。 人の目には何も見えない闇の夜。 僕の目には瞬いている月闇が映る。 妖しげな剱に似たひとすじの光は不思議と心を落ち着かせてくれた。 「伊織、封印して下さい。」 「了解。」 カラダの全神経全細胞が拘束されたような、 カラダを蜘蛛の糸で複雑に縛られたような、 もどかしい感覚が全身を襲った。 部屋で練習した時には感じなかったが、“封印”と呼び、“秘術”と言われる所以がわかる。 人だと断言した透子。でも透明人間初日の僕にしたら、奇々怪々なことだよ。 「ふふっ。大丈夫?」 「ダイジョーブじゃない。」 ほぼ棒読みなヘタレな僕。 「初めてにしては上手ですよ?」 ギュッ! 励ますように手を握ってくれた。 「ガンバリます。」 そしてカタコト。 「ふふふ。」 チャリ! 手にした鍵が鳴る音がした。 「あら伊織なの?何、門扉でイチャついてる訳?」 背中越しに聞こえた重低音ボイス。 「「ギャー!!!」」 内心、2人で雄叫びを上げつつ、 「あ、あ姉貴、ただいま?」 振り返って見た姉の形相に、実家に戻ったことを後悔した。
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