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「美味しいわね、バームクーヘン。」
うっとり花を愛でるように見ながら、ゆっくり咀嚼する姉、狭間志織。
自己チューだが弟思いの天真爛漫さがウリ。
「透明人間だなんて凄いなー。人とは異なるチカラだなんて活用すればいいじゃないか。なぁ母さん?」
父、狭間伊知郎は独創性溢れる人だ。
家庭では自由奔放しているが、職場では頭脳明晰、実直な弁護士である。
「そうね。覗きとか盗みとかダメよ?犯罪には使ったら勘当するわよ?」
(こ、恐いよー!!)
母、狭間沙織は美人秘書として父の傍にいる。家庭も職場も彼女が采配している影の主。性格はおっとり天然ちゃんで正義感がある。
「透子ちゃん、こんなひょろいのでいいの?伊織ってば、ちゃんと責任取りなさいね!」
何故か姉が代表して言い放った。
さりげなくバームクーヘンをみんなのお皿に追加していた母。
そんな母を愛しむ目で見つめながら、父は紅茶を飲み干して僕に提案した。
「逆手に取って、人助けなら構わないだろ?夜に開業する探偵事務所とかどうだ?」
父の言葉に盛り上がる家族。
「ソレいいわね!」
「どうしても日中では困難な調査もあるしな。」
「そうよね。顔バレ防止と言えば、不自然じゃないしね。」
「昼間は、志織が電話番すればいいんじゃないかしら?」
「そうね!週2なら善処するわ☆」
こうして、僕は深夜の調査員として働く、狭間探偵事務所の一員となったのだ。
【前編・完】
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