曲がった先には

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恋人の透子が話しかけてきた。 (伊織。巡回はどう?順調?) (うん。後で報告するよ) ちなみに会話はスマホではない。イヤフォン越しには音楽が流れている。 ここだけの話、テレパシーなんだ。 ええっ?嘘だろうって?僕たちが「実は透明人間だ」って言ったら、あなたは信じてくれる? ある日。彼女と自転車に乗った僕が衝突した。生まれながら透明人間と称される“透明族”の彼女と僕の“珠”が交ざり合い、透明族体質(と呼ぶことにしている。)も受け継いだのだ。 お互いの伴侶となりし者同士は、直に触れ合えるという理が僕たちを結んだ。本来ならすれ違うはずだったが、運命が僕たちの関係を繋いだ。 実際、他人には僕たちの姿は見えない。姿や声など相手に認識させるには、月の力を源に秘術と呼ばれる“封印”のチカラを使う。 当時、両親や姉は興味津々だった。 「透明族体質を利用したら良い。」と、父から助言を受けて探偵事務所を設立して現在に至る。 獅子のように偉大で気まぐれな父は副業所以、完全放置の幽霊所長だ。そんな父に寄り添う母も経理担当だがパソコンに入力したデータを確認するだけ。両親は運営には関わっているが不在だ。 何かあれば電話やメールでやり取りする。本業は弁護士と秘書なので、一般論で通用しない案件の場合に僕たちに調査依頼が舞い込むってワケ。 協力を惜しまない家族にホント感謝してるんだ。
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